平成13年度基幹ネットワーク活用部会開催概要  9月14日(金)に開催しました部会には、約45名の皆様から御 出席賜り、熱心な意見交換をいただきました。大変ありがとうござ いました。同部会の概況を御報告いたします。  はじめに、平中部会長から、意見交換のベースとなるお話として、 当部会の扱うテーマ・課題としてのネットワーク構築及び利用方法 に関わる課題、東京を経由する通信の遅延データに基づく地域IX の必要性及び効果、現在取り組まれている地域IXプロジェクト及 びIPv6の共同実験等について御紹介いただきました。また、「 ネットワークは道路と同じ」との御持論のもと、ネットワークは公 共のものと考えるべきこと、どこへでも何でも持っていけると社会 の発展につながること、物理接続(道路自体)と利用形態(サービ ス)の分離が必要と考えられること等の考え方が示されました。  次に、県情報企画課の藤原補佐から、地域インフラとしてのネッ トワーク整備における民間と公共の役割分担について、また、情報 基盤としての基幹ネットワークの県民や企業(産業)による有効利 用のあり方についてこの部会等で議論していきたいこと、県基幹高 速通信ネットワークの今回の整備内容及び今後の展開イメージ、さ らに、通信基盤の県機関以外による利用の考え方として、当面は普 及啓発・実験から始め、将来的には一般利用に供するかどうかつい ても議論・検討していきたいこと等について説明いたしました。  続いて、会員による意見発表として、東北インテリジェント通信 (株)の福田さんから、同社のIPv6 over IPv4トンネリ ング実証実験への取組み、地域IXについての考え方、同社の高速 イーサネット網(VLAN)サービスの取組み、県基幹高速通信ネッ トワーク活用に係るメニュー等について御紹介いただきました。  福田さん、お忙しいところ、大変ありがとうございました。  引き続きフリーディスカッションに入り、非常に活発な意見交換 が行われましたが、その一部を御紹介させていただきます。 (アステック笠原さん)当社でテレビ画像を使った障害者支援シス  テムに取り組んでいる。平中先生のお話でH.323を使ったテ  レビ会議システムの実験の紹介があったが、H.323に限定さ  れるのか。また、ネットワークを利用して福祉関係の支援を行う  と良いと思うが、藤原さんのお話では利用目的として学術研究と  いう話があったが、福祉は目的に入ってこないのか。 (平中部会長)H.323に限られるものではない。帯域を確保す  る必要はあるが、色んなものに使うといいと思う。 (藤原補佐)利用目的の一例として学術研究を挙げているが、行政  投資という観点から、福祉目的も当然入れるべきだと考える。 (赤塚会長)当然入れるべきだと思うが、そういう県民生活に密着  した色々な使い方を考えたらどうかという提案があったときに、  そういうグループ等をどのように作っていくかについて、この部  会の中でどう考えていくかということも笠原さんの質問には含ま  れていると思う。 (藤原補佐)NPOやボランティアの育成など、今後県あるいは地  域としての取組課題があると思うが、そのような橋頭堡を築く上  で行政投資があるというのは起こり得ることなので、関係部局を  巻き込みながら議論すべきだと考える。また、この部会で具体的  な提案になっていけば、県の中でまとめて議会にも説明していけ  るし、予算につながるかもしれない。 (平中部会長)この部会の進め方の議論をまだしていないが、今回  は初めてなので皆さん様子見という感じだと思うが、今後同様の  提案等があった場合、どのように進めるか。 (藤原補佐)CSS部会で行っていることだが、MLでオンライン  で議論している。先日芸工大の白神先生が地域ポータルに関する  ML上の議論を整理して、論点整理をしてくれたといった経過が  あるが、そのようなことはこの部会でも考えられる。 (平中部会長)この部会のMLを新たにつくって、議論をしていた  だくということで。MLをどう使っていくかは皆さん次第という  ことでお願いしたい。 (笠原さん)先ほどの話について、どこでどう働きかけていけばい  いのかが自分でも整理できていないが、先ほど示唆あったように  NPOが一番良いという気もするので、そういう人たちにも声を  かけてみたい。 (企業振興公社高畑さん)14年1月までに県の基幹高速通信ネッ  トワークを整備するということだが、これはどのくらいの予算で  やられているのか。 (藤原補佐)庁内LAN及びスイッチ工事で約9億1千万、その他  PCの整備等を合わせておよそ20億程度。我々としてもネット  ワークについてかなり勉強してこのような予算となっている。 (高畑さん)先行して情報ハイウェイ整備に取り組んだ他県等で地  域IXの取組事例、成功事例はあるか。 (藤原補佐)これまで行政が直接投資して、民間の産業に利用する、  あるいは県民の方々のインターネット接続に利用するという事例  について、非常にうまくいって他県に薦めるというところまでいっ  ているところはないと思う。むしろそのような事例を参考にして、  どうあるべきかという議論をしていく必要があると考えている。 (ブレイン・アクト増田さん)これまでの議論だと、県がプロバイ  ダ・ビジネスを行うというふうに聞こえるが、これまで民間企業  が伸びてきているなかで、現行のプロバイダに対する圧力になる  のではないか。 (藤原補佐)一般(商業)利用させるかどうかをこのような場で議  論していただきたいし、また、山形で、行政が何もしないで民間  事業者さんが新しいサービスを整備してくれるのを待っているだ  けでいいのかということを考えていく必要があると申し上げたも  ので、プロバイダ業務を行うとは言っていない。 (増田さん)地域の情報格差の解消のために、県として何らかの後  押しとしてネットワーク基盤の活用があるとすれば是非行ってい  ただきたいと思う。 (増田さん)地域IXについては、時期的に遅いのではないかとい  う気がする。ほとんどのプロバイダが東京大手町のKDDIビル  のIXにつないでいるという状況がある中で、地域IXつくるこ  とが必要なのかどうか。地域情報というものに限れば意味がある  かもしれないが、我々インターネット関連のビジネスをしている  者にとってはちょっと遅いのではないかという感じがある。 (平中部会長)遅くて意味がないものであればやる必要はないが、  現状ではまだ必要だと思う。どういう方法でやるかが重要で、商  業的に成立するのであれば商業的にやればいい。今ないから機能  しないと思っている。アメリカ等の例を見ても、接続点はどんど  ん変化しており、もっと自由なつなぎ方をしている。日本でもそ  ういうニーズはあると思う。 (増田さん)確かにブロードバンド時代で映像を流そうとした時に  は東京で足りるのかという問題があるが、通信業者が地域IXに  取り組もうとする場合、地域IXについてどうするのかという国  としての基本的な方針がないとなかなか難しいと思う。 (平中部会長)ネットワークの利用がどんどん伸びていくと、どこ  かで飽和する。お金が無限にあればどこかに集中させてもいいが、  そうでなかったら、コストを下げたネットワークの作り方を考え  なければならない。それは一極集中ではなくて、あちこちに分散  する方向だと思う。今後ネットワーク全体として必要なものでは  ないが、個人的に必要なデータ、使い方がどんどん増えてくる。  ネットワーク全体のコストパフォーマンスを上げるためには分散  型が必要。 (増田さん)地域でしか必要のない情報は地域IXの中でやり取り  するという考え方はあると思うが、逆に我々のように全国に向け  て情報を出している者にとっては、手っ取り早く大手町につない  だ方が速い。地域IXを通すと大きな遅延がかかるといった現象  も起きうる。 (平中部会長)全国や世界に流したいとすれば、それにベストなや  り方がある。ただ全体を見た場合に、みんなが東京につなぐとコ  ストパフォーマンスが良くない状態になっている。それを改善す  るのが分散型ということ。私の認識では大手のプロバイダさんも  接続点を増やそうという方向にあると思っているが。 (KDDIさん)今のところ、近い将来に全国的に展開をしていこ  うという方針はないと思う。 (産業創造支援センター金内さん)先ほど平中先生から、アメリカ  ではIXが消滅してピアリングになりつつあるというお話があっ  たが、ピアリングについては大きなもの同士がつながって経済効  果を生むための仕組みだと解釈した。ピアリングは対等だという  ものの、強い人が得をする仕組みになっている。国内の強いプロ  バイダ同士がピアリングを行うという議論はないのか。 (増田さん)地域にこだわったプロバイダとして、東北インテリジェ  ント通信さんは地域IXになり得たのではないかと思うがいかが  か。 (東北インテリジェント通信鈴木さん)当社では平成10年4月か  らISPサービスを開始したが、その時点ではそこまで深く考え  ていなかった。現在他社とのピアリングについて内部で検討して  いるものの、費用対効果等を考えるとなかなか前に進まないとい  う状況だと思う。 (金内さん)設備投資をしている回線容量をまだ使いきっていない  ということか。 (鈴木さん)容量的には増量が必要になってきている。 (三澤課長)地域IXについては、一昨年から検討を始め、各プロ  バイダさんから集まっていただいて勉強会を行っていたが、昨年  途中で中断になっている。各プロバイダさんともIXがあった方  がいいという御意見だったが、自己負担してまでIXまで回線を  引くのかというと難しいという話だった。色々話を聞くと、地元  のプロバイダの上位プロバイダが実質的に地域IX的な機能を果  たしているというお話だったが、地域IXについてはまだまだ議  論していく必要があると考えている。 (平中部会長)大手プロバイダ間の競争がきつくなってくると必要  になってくると思われる。さっきピアリングの話が出たが、強い  者同士が自分たちのメリットを考える中で、山形なんてどうでも  いい所だということになるのが一番心配すべきことで、自分たち  で考えなくてはならなくなる。 (増田さん)地域IXに絶対反対というわけではないが、どうして  も地域IXがないと難しいという利用形態が出てきたときに再度  議論しても良いのかなと考える。現状で動画が流れる仕組みがで  きているが、実際にはあまり利用されていないというのが現状だ  と思うので、インターネットをどう利用するのかを議論していけ  ば、それにふさわしいネットワークもできてくるのかなとも思う。 (笠原さん)今動画の利用が少ないというのは明らかに回線の帯域  が少ないから。ラスト1マイルの遅さもあるが、今回我々でPH  Sで動画を流す実験をしているが、インターネットそのものを介  した場合のディレイが大きな問題となっている。そういったこと  を考えると地域IXのニーズというのは絶対にある。ただ、確か  に費用対効果といったときに、ものすごく問題だなという気はす  る。 (平中部会長)最近費用をあまりかけない方法もある。山大の学生  がネットワーク越しに楽器の合奏をしようとするときに、あのス  ピードではかなりつらいということがある。 (増田さん)品質をどう維持するかという議論だと思う。メールの  ように多少時間がかかっても良いものと、テレビ電話のようにリ  アルタイム性が保証されなければならないものがある。そういう  意味で、どう使うのか、何に使うのかという目的を明確にしてい  く中で、笠原さんの言われるような利用方法であれば地域IXが  必要だという考え方はあると思うが、現状ただ地域IXが必要だ  と言っても、なかなか関心を得られないのではないかと思う。 (金内さん)今の、スピードは速いけれどディレイが問題になると  いう話だが、IPも今見直しの問題を抱えているが、パケットを  本当に小さくしてディレイをなくするというごまかしの技術が通っ  てしまう。帯域保証の新しいサービスをプロバイダが考えるので  はないか。それを使えば良いんじゃないかという議論も出てくる  と思う。   先ほどの平中先生のIPにこだわらないというお話を面白く聞  いたが、確かにIPを使わないネットワークができたら、勝手に  近くの相手に最短距離を探してパケットを届けるということがで  きるはず。その辺について新しいアイディア等があれば教えてい  ただきたい。 (平中部会長)IPv6も次世代プロトコルとしては不十分。誰か  が新しい方法を考えるだけではなくて、みんなが使える状態に持  っていくというところが工夫のしどころで、それさえできれば、  IPに縛られない応用がどんどん広がってくると思う。 (金内さん)電話会社の回線交換システムというのが、実は全国津  々浦々まで最小のコストでつなぐためのものだったと思う。遠い  ところに電話をかけるときはもちろん料金をいっぱいもらいます  よと。インターネットになって皆びっくりしたのは、アメリカも  市内と同料金ということ。それは東京一極集中のIXでつないだ  から可能になったことで、それをもう一度忘れて、遠いところは  高くて近いところは安いと、大量のデータは近くで処理しようと  いうように、皆さん頭を切り換えてくれるかというと疑問。私は  両方があっても良いと思う。 (平中部会長)IPをずっと使えると思っているとしたら間違いだ  と思う。少なくも今v6に移行しなくてはならないわけで、ただ  v6自身が別次元のように良いものではなかったということから  手間取っている。もっと良い会話、良くて、しかもみんなが使え  る状態に持っていけるかどうか、それはそのうち出てくると思う。  ただ、現状の良くないところを取り除けば良いものになると思っ  ている。地域IXについても同じだと考えている。  以上のように、白熱した議論が行われました。まだまだ意見を言 い足りない皆様も多くいらっしゃると思われますので、この続きは、 別途御案内しました「基幹ネットワーク活用部会メーリングリスト」 の方でお願いしたいと思います。当日御出席の皆様は同MLに登録 させていただきますが、当日御欠席の方でMLへの参加を希望され る方は事務局まで御連絡くださいますようお願いいたします。                           (以上)                        (以上)