平成13年度eコマース部会(第1回)開催概要  第1回eコマース部会は、7月10日(火)、ドコモ東北山形支店 さんのできたての施設「モバイルラボYAMAGATA」をお借りして開催 し、約60名の皆さんの御出席をいただきました。この場をお借り して、ドコモ東北山形支店さんに厚くお礼を申し上げます。  開会にあたり、県の佐々木企画調整部長から、NTT東日本山形 支店さんから提案のあった共同実験事業の概要、前回のブロードバ ンド部会で河北町さんからあったお話を受け、有線放送網を活用し て情報通信サービスを行う場合の問題点について平成14年度山形 県重要事業として国に要望を行っていくこととしたこと、また、県 が行うIT講習会の実施概要について説明・報告がありました。  次に、ケーブルテレビ山形の吉村部会長から、ブロードバンドな どのインフラの上に成り立つサービスが重要であり、その際は、ど んな人でも利用できるようなユニバーサルデザインであることが必 要。メールのやりとりにとどまらず、生活者の視点に根ざしたサー ビスが必要であり、個人認証なども含め産学官民一体となって考え ていくことが重要であるので、皆さんから活発な意見を頂戴したい 旨の御挨拶をいただきました。  引き続き、会員の皆さんからeコマースに関する事例の御紹介を いただきました。 ●吉村部会長からは、経済産業省の所管事業である「バーチャルシ  ティーやまがた」をはじめ、情報化推進における個人認証の重要  性、また、国等がBtoC(総務省が進めている住民基本台帳)や  BtoB(国土交通省のアクションプランの中で、電子入札につい  て国は2004年、地方は2007年までシステムを整備)を進めている  中で、山形県の情報化をどう進めていくかを検討していかなけれ  ばならないことなどが紹介されました。 ●東北郵政局郵務部営業課の阿部課長補佐には仙台からお越しいた  だき、電子商取引におけるインターネットの特性を把握すること  の重要性について御紹介いただきました。今後BtoBやBtoC取  引は市場の急拡大が予想されている中、リピーターの獲得に向け  たサイト構築や検索ルートの工夫、ローカル性の適切な打ち出し  方の重要性など、ふるさと小包の事例などを参考にお話ししてい  ただきました。 ●荘内銀行の山澤常務からは、金融における電子商取引市場規模の  伸び率が高いこと、荘内銀行のインターネットバンキングの紹介  からネット専用銀行、デビット決済、マルチペイメントネットワ  ークなど電子化になじみやすい金融の状況を御紹介していただき  ました。 ●田宮印刷の森ゼネラルマネージャーからは、ショッピングモール  「pipicity」に開設しているオンラインショップの成功事例を紹  介いただき、意外なところにある商品が売れるためのノウハウに  ついてお話ししていただきました。 ●ブレイン・アクトの増田社長からは、同社で制作に携わったゲー  ムソフトのサイト「TVパニック」の成功事例から、固定客をい  かに獲得するかについて御紹介いただきました。特に、固定客獲  得のためには徹底した保証サービスを行い、安心感をいかに出す  かが重要とのことでした。  プレゼンテーションをいただいた皆さん、お忙しい中本当にあり がとうございました。  その後、フリーディスカッションに移り、次のような意見交換が 行われました。 (フロア)どういったBBS(電子掲示板)が盛り上がるのか。 (増田さん)買い物以外の情報、「あのゲームは面白かったよ」と  いうような二次的な情報がどれだけあるかが重要。サイトは店構  え、そこに入るためには自分と同じ仲間たちの情報をどれだけ取  れるかといったことが一つのポイントだと思う。 (森さん)マニアにしか分からないような会話があり、それに対し  て店長が誠実に応えることで反応が違ってくる。それが他のお客  さんに対しても安心感を与えるような状況が出てくる。そうなる  と、リアル店舗の方でも注文が増えてくる。 (吉村部会長)総合的な情報、専門的な情報を複合的・重層的に付  加することによって付加価値が上がってくる。ユニクロの成功例  でも利用者側に立った販売形式を提供している。とにかく、「今  欲しい」というデマンドに的確に応えられることが必要。それが  裏に隠された信用性・安心性につながってくる。最終的に山澤常  務が言われたような電子マネーにつながってくる。 (東根インターネットクラブ 伊勢さん)サイト構築の費用対効果  や採算性の状況についてお伺いしたい。 (増田さん)費用対効果は一番の課題。TVパニックの初期投資は  約1,500万円。運用コストは20数万円。現状としては、通  販サイトで資金回収するのはかなり難しいと感じている。そうい  う意味で、先ほど田宮印刷さんからお話のあったように、リアル  ビジネスをサポートするという視点も重要であると思う。 (吉村部会長)森さん、通販サイトの開設には最低限どのくらいの  コストがかかりますか。 (森さん)一人がかかりきりになってやればその人の給料分という  ことだが、ある程度数がまとまったショップを運営しようとする  と個人でやるのは難しい。私どものサイトでは月5,000円で  注文受付の代行まで行っているが、基本的にパソコンがなくても  「pipicity」に出店が可能であり、寄せられた注文はファックス  で送っている。ネット上のショッピング・モールは山形県内では  飽和状態に近いと思う。それよりは、ASP的なサービスを受け  られて、それをどう生かしていくかを考えた方が手間がかからず  利益につながると考える。 (吉村部会長)HPを自分で立ち上げるのはそんなにコストはかか  らないが、そのサイトを運営して収益を上げるには、参加企業の  問題やインセンティブの問題など多重的に構築しないとなかなか  難しいという話だと思う。 (佐々木企画調整部長)企画という立場で中心商店街の問題も担当  しており、その中でITを活用するというとどうしてもバーチャ  ルというイメージが強いが、今のお話を聞かせていただくと、客  を呼び込むということにもやりようによってはできるなと感じた。  プライバシーの入力について日本ではまだまだ抵抗感がある中で、  現在の決済システムや物流システムをどのように改善していった  らよいのか、また、ブロードバンド化が進むことによって、今後  のeコマースがどう変化していくかの2点について教えていただ  きたい。 (吉村部会長)個人的見解だが、まず「リーダー・ライター」等の  ような携帯電話やICカードのチップを読みとれる機械を各デパー  トや映画館、商店、ホテル、公共施設等に設置することとして、  例えばデパートで10回買い物をすれば1回映画が観れるという  ように、共用ポイント流通の約束事がしっかりできあがることが  必要。次に、デビットという即時決済やオフデビット、クレジッ  トという形でしっかりした決済システムがあることによって経済  の活性化が図られると思う。そして、医療や福祉、行政も含めた  ネットワークが一体となって、ポータルサイトとして県民・市民  の目の前に登場し、そこから様々なソリューション・サービスを  提供するというのが今後の方向で、それをこの2年くらいの間に  つくり込む必要性を感じている。   2点目のブロードバンドについては、既に映画や大リーグの試  合をPC上で観ることができる。音楽もダウンロードすることが  できる。これが一般的になった場合に、ビデオやCDのレンタル  店は要らなくなる。そうなった時に地域経済をどう守るかという  ことをしっかり考えて地域ネットワークを組んでおかないと、最  終的には中央にお金を吸い取られてしまうということが起こる。 (山澤さん)取引には与信というものが発生するが、デビットのよ  うな即時決済が一番確実なので、それがどの程度広がるかという  ことに注目している。一番簡単なのはプリペイド形式の電子マネー  だが、これも通貨という形で流通させようとするとなかなか難し  い問題がある。 (アステック 笠原さん)ブロードバンドについて、ユーザが多い  から中央からブロードバンド化が進むという形だが、ネット上で  何か商売をやろう、例えばデータセンターをやろうと考えた場合、  ほとんど地方に置いてある場合が多い。これは地代が安いという  地方のメリットがあり、かつ、ネットワークは場所に関係なく、  データが地方に置いてあっても都心部で扱えるから。そう考える  と、都市部に吸い取られるということではなく、山形に先にブロー  ドバンドが来れば、都市部のデータを全部山形に持ってくるとい  うことも可能性としては考えられる。ブロードバンドができてし  まってから、さあ何をやろうかということではなく、何をやるた  めにブロードバンドを構築するのかを考えていかなければならな  い。 (吉村部会長)現在、中央各社でブロードバンド・コンテンツ配給  会社を立ち上げているが、そういった中で、先日のブロードバン  ド部会で申し上げたことは、県内の放送局が早く今の映像をブロー  ドバンド化して流さないと対抗できないのではないかと。対抗す  るために、ローカル情報とオールジャパンの情報をしっかりとブ  ロードバンド化して構築することで中央に対抗できるのではない  かと申し上げたところである。 (東北芸工大 前川さん)地域にあって、地域のものを地域向けや  全国向けにサービスするというパターンと、地域にあっても全国  規模の仕事をするというパターンの二つが考えられる。例えば、  先ほど紹介のあったネットバンクのようなサービスであれば、山  形に本社があっても日本全国を対象とした金融業務を行っても全  く問題ない。そういう全国規模の会社が地域にあっても良いんじゃ  ないかという話と地域に根ざした地域のための商売を行うという  話は、切り分けて考えるべき。 (吉村部会長)まさにTAO(通信・放送機構山形映像アーカイブ  リサーチセンター)などは、あれだけ良いものがあるのだから、  どんどん全国発信すべきだと思う。 (増田さん)当社で昨年データセンターを立ち上げるためにバック  ボーン回線をどこにしようかと考えたとき、結果的にKDDさん  にしたのだが、現状としては、大手町のKDDビルに日本のイン  ターネットの中心がある。データセンターをやろうとするときに、  KDDビルにラックを借りた方が後々有利だという結論になった。  現実としてはそういう現実がある。それから、インターネットで  送れるのは情報だけであって、実際のモノを配送するのは人であ  り、流通業の方々である。また、代金回収については、運輸業者  や郵政省さんでも代引き制度が整備されてきているが、eコマー  スの推進について考える場合、物流と代金回収ということも重要  なポイントとして考える必要がある。IT革命と同時に流通の革  命についても何らかの方策を打っていく必要があると考える。 (森さん)決済について、クレジットカード決済が必須かと言えば、  必須ではないと判断している。現在どこのカードを使うかまだ決  めていないが、そのことでショップ側からクレームがついたこと  はない。お客さんからカード決済も使えたらいいという意見が1  件あっただけ。ほとんどの場合代引きである。日本の場合、ほと  んどの店舗が代引きの契約をしており、その流れに乗った方が安  心、早い、安いということがある。それと、インターネット・モー  ルでは複数のショップで買い物をしても、品物が送られてくるの  は別々であり、送料が別々にかかってしまう。そういった意味で、  共通の配送・流通基盤の整備も必要と考える。 (吉村部会長)「バーチャルシティーやまがた」は商工会議所が中  心となって検討が進められているが、商工会議所の中の運輸部会  等がそのような配送センター的な役割を担えないか、検討をお願  いしている。eコマースの補完部隊として運送業者の活用につい  て行政も含めて検討を行えば早く進むと思うが、リアル産業との  連携がどうしても必要。 (フロア)eコマースのお話を聞かせていただいたが、おじいちゃ  ん、おばあちゃんでも使えるようになるだろうか。いま郵貯の個  人認証の実験モニターをやっているが、設定や手続きが非常に面  倒で、とてもお年寄りが使えるとは思えないが。 (吉村部会長)先ほどから申し上げている「ユニバーサルデザイン」  ということで、障害を持つ方でもITを活用できるような仕組み  づくりが進められており、また、現在県と市町村でIT講習会を  行っているが、高齢者の参加・申込みが非常に多い。機器メーカー  でもお年寄りや障害者にとってさらに使いやすいものを考えてい  るし、そうあらねばならないと考えている。 (佐々木企画調整部長)eコマース部会について、物流・決済シス  テムの基盤をどううまくつくっていくかということがポイントで  はないかと考え、その点をこの部会で誘導していけないかと考え  ている。行政としてやるべきことがあればやっていくということ  だが、どこまで県がやれるかということもあり、先ほど紹介のあっ  た山形市のバーチャルシティーの実証実験等でそのような基盤が  うまくできればいいと思っている。ただその場合、運送業者や金  融機関間の競争があるので、そのへんについては、この協議会と  いう開かれた場で議論していって、競争するところは競争する、  協働するところは協働するという形で調整をとりながら進めてい  ければと考えているので、この協議会の場は非常に貴重だと思う。  今日は第1回目ということで総論的な話も多かったが、その中か  らポイント的なところを拾っていって、進めていければと考えて  いる。   また、データセンターの話があったが、冒頭NTTからの共同  実験の提案について申し上げたが、ブロードバンドを活用するビ  ジネスモデルを是非試してみたいということがあれば、是非提案  していただきたい。また、もう一つ、地域IXに関する部会を予  定しており、地域におけるIXをどうつくっていくか、それと同  時にデータセンターを県内に持ってくるということができないか  ということ等についても検討していきたいと考えているので、ま  た皆さんのお知恵・発想をお借りしながら進めていきたい。  御出席いただきました会員の皆様には、活発な意見交換をいただ きまして、大変ありがとうございました。                           (以上)                        (以上)